糸もみじのブログ

シャニマスの感想。

長い長い人生の中で―浅倉透WING感想文。

 まずはご覧いただきありがとうございます。
この文章は、タイトルの通り、WING浅倉透編全編に基づく感想文、そして自分なりにWINGの内容を整理した文章です。
それでは、本文に入っていきます。

浅倉透について

 まずは公式プロフィールを確認します。

『自然体で飾らない性格。周囲からどう見られるかということを気にせず、おおらかでマイペース。しかしその透明感あふれる佇まいには誰をも惹きつけるオーラがある。高校2年生。』
引用元
浅倉 透 (あさくら とおる) | アイドルマスター シャイニーカラーズ(シャニマス)

同ユニットの樋口円香、福丸小糸と市川雛菜とは幼なじみ。円香と小糸とは幼稚園から(12~14年)、雛菜とは小学校から(6~11年)の付き合い。(参照:福丸小糸朝コミュ)かなりの長期間いっしょにいることが分かります。
シャニマスの他のユニットと大きく異なり、ノクチルではユニットが組まれる以前から4人の間に人間関係が存在することが特徴といえます。

はじめに~WING編についての所感

 5つのプロデュースコミュとWING後のコミュ(敗退コミュと優勝コミュ)を中心に構成されます。
透とプロデューサー、それぞれの視点を中心に物語が進んでいきます。

私はWING浅倉透コミュを次のような構成だと捉えています。

起…あって思った(プロデュースコミュ1)
承…人生(プロデュースコミュ2)
転①…あれって思った(プロデュースコミュ3)
転②…ていうか、思い込んでた(プロデュースコミュ4)
転③…ちゃんとやるから(プロデュースコミュ5)
結…人生、長いから(WING優勝コミュ)

プロデュースコミュ3以降は、WINGを通じ透の中で起こる人生観の変化について、時間をかけて描写されます。私はプロデュースコミュ2以前と以降を比べるとそれについて大きな変化を見いだすことができると考えています。特にWING優勝コミュとコミュ2を比較するとその変化が顕著だと言えるでしょう。

以下、コミュの内容を1つ1つさらいながら、透の考えについてみていきましょう。

1.「あって思った」

 アイドル浅倉透のはじまりを描いたコミュ。
バスを逃したプロデューサーに、バス停に居合わせた透が次のバスは40分近く来ないことを伝えます。
透の雰囲気に惹かれ、アイドルに興味はあるかと声をかけるプロデューサー。ハッキリと拒否し場を離れようとした透ですが、それを察し自ら去ろうとしたプロデューサーの一言に反応して態度を一変させます。その場で名刺を受けとり、その後283プロに所属したことが描かれています。


 透がアイドルになるきっかけは、プロデューサーによるスカウトでした。
一方、透自身がアイドルになる動機や目標、アイドルへの思いや憧れといったものはあまり見受けられません。
透はなぜアイドルになったのか?はこれまでの実装内容でも難しい問いですが、その判断の一端を透の回想から窺うことができます。本編も透の回想を挟みながら物語が進行していきます。

 このコミュで透の回想は全部で3回。*1

①「俺が、行くからさ!」に対する透の反応

プロデューサーのとっさの一言に何かを思い出す透。

②①の直後に挟まれるジャングルジムの回想
 これらの回想を経て、透は去ろうとするプロデューサーを呼び止めて名刺を受けとります。
回想前後でプロデューサーへの対応が明確に変化しており、回想の出来事が名刺を受け取る判断に大きく関与したことがプレイヤーに示唆されます。

③事務所での会話中のジャングルジムの回想
 アイドルになる理由をプロデューサーがしつこかったからと話していますが、他にも理由がある様子がプレイヤーに示されます。

表向きの理由はプロデューサーのしつこさのようですが…
2.「人生」

 朝起きたた透がアイドルの日々の始まりを意識するところから始まります。
思うのは見ていた夢のこと。小さい頃からよく見るという、ジャングルジムをのぼる夢。「のぼってものぼってもてっぺんにつかない」「のぼる前にはたいした大きさに見えなかったけどひとつ足をかけるともう上が見えない」ジャングルジムは、きっとどこまでも続くように見えているのでしょう。

 後半では、アイドル活動の様子が描かれ、プロデューサーは透が知らない人から挨拶される様子に驚きます。
透は自分では何もしなくても相手から挨拶がもらえること、番組ディレクターから好評だったことについて、特別だと思ったアイドルも学校も生活と変わらない、アイドルをやるなら簡単でないくらいでないと人生は長すぎる(=つまらない?)、といった発言をします。思い描いたアイドル像とこの日の活動で得た実感には、大きなギャップがあったように見えます。

相手から声をかけてくれることに対して学校と変わらないと話す透。学校での周囲との様子も窺えます。
3.「あれって思った」

 オーディション帰りの透とプロデューサーの会話から始まります。オーディションは上手くいかなかったようですが、透はその理由が分からないようで、そのことについて話そうとプロデューサーが提案します。

バス停そばの隠れたベンチの位置を知るプロデューサーを見て、このあたりも詳しいんだね、と声をかける透。
そして、昔この公園でジャングルジムにのぼったことがあると話すプロデューサー。

ジャングルジムにのぼった時のことを透に話すプロデューサー。

 ここではその時の話について掘り下げはされず、オーディションの話に移り、場面も変わります。プロデューサーは透がどんな子なのかをもっと伝える必要があったと話し、自分も透のことを知りたいから思ったこと、感じたことを教えてほしい、と伝えます。
透はプロデューサーには言わずとも伝わっていると思っていたようで、その申し出を不思議に思い、こう言います。

初めて会った気がしないから、と。


 このコミュでは、透が思っているほどはプロデューサーが透のことを分かっていないことが示されます。
また、今回のやり取りを通じ、透はプロデューサーがこの公園のジャングルジムにのぼったことがあると知ります。

4.「ていうか、思い込んでた」

 プロデューサーは透をわかるために、日誌をつけるよう伝えます。「透のことを分かりたい」プロデューサーと、「そんなに通じてないなんて思わなかった」「心が通じてるって」と話す透。
コミュ3に引き続き、プロデューサーの『分からないから分かりたい』というメッセージを受け取った透は、自身が分かられていないことをハッキリ知ることになります。

 透はかつてジャングルジムを一緒にのぼった人物=プロデューサーだと思っていました。そして、その際のやり取りから、その人になら言葉を交わさなくても何でも伝わると思っています。
しかし、プロデューサーの言葉を受け、自分が思っているほどプロデューサには分かられていないこと、伝わっていないことを知ります。ここから、タイトル通りプロデューサーはジャングルジムを一緒にのぼった人ではない=思い込みだったのではないか?と考えるようになります。

4.5 3次審査通過

 通過して嬉しそうだと話すプロデューサーは、「分かってくれてるじゃん」と言う透に「その顔見て嬉しいって分からなかったらプロデューサー失格だよ」と返します。
日誌にもちゃんとどんなふうに嬉しいか書くよ、と言う透。
 3次審査通過という結果を得て、2人は喜びの感情を共有します。ここまでのやり取りで言わなければ伝わらないと分かったからこそ、3次審査通過という特別な時間を通じて、言葉を交わさずとも喜びを分かり合える瞬間が訪れる、私の好きな場面です。

5.「ちゃんとやるから」

 渡されたアイドルのDVDを透が休みの日にチェックします。プロデューサーが事務所に戻ると、休みのはずの透がいて、DVDの感想を話し出します。今日は日誌がないから直接言いに来た、と。
感想を話し出す透ですが、その感想は、一言二言ですむものでした。プロデューサーはおかしさと嬉しさに思わず笑いだします。

 最近よく思い出すんだ、と、男の子とジャングルジムにのぼった時の話をするプロデューサー。
一緒にてっぺんに座ったときの嬉しさを引き合いに、『人生は長い』けれど、のぼっていくのはいいことだから、と話すプロデューサー。透は、最近はてっぺんに近づいてるみたいな感じがする、思ってたよりは人生短いのかもと感じていることを伝えます。
人生長いからこそ嬉しいことを増やそう、と言うプロデューサー。ある選択肢では、透が「日誌に書けること、増やしてくから。」と言う。日誌を通じ、日々のことを共有して分かりあっていく様子が伝わってきます。

 透にとって長く退屈なものだった人生に、目標が見つかった大切な瞬間だと捉えています。また、透が人生長いと考える頻度も減っており、アイドル活動にも前向きに取り組めていることが窺えます。

「嬉しいってこと」(WING敗退)

 悔しさと嬉しさについて。
 負けた悔しさを口にするプロデューサーに対し、透は「のぼってて増えるのは、嬉しいことなんでしょ?」と問います。
コミュ5のの透の言葉を借りれば、いっしょにのぼる嬉しさの実感もあったのではないでしょうか。そして、負けた悔しさが自分の中にもあることもまた、熱中できた実感として嬉しかったのかもしれません(これは完全に想像ですが…)
コミュ2のような退屈さを感じさせる姿ではなく、打ち込み、向き合ったからこそ感じる悔しさ、そして悔しく感じられるほど熱中できた喜び。そんな気持ちを感じました。

悔しいこともまた、嬉しいこと。
「人生、長いから」(WING優勝)

 ジャングルジムのあの日の全貌が透の回想により描かれます。そして、自分のことをちゃんと伝えようとする透の口から、昔一度会っていると伝えられるプロデューサー。そして、その時のことは自分で思い出してほしい、とも。自分のこと、ちゃんと伝えようって思って、と話し、プロデューサーがしつこいから、と笑う透。WINGで優勝し、これから時間をかけてでも一歩ずつ一緒に進んでいこうといういく決意が窺えます。

時間があるからこそ、すぐに伝えてしまわずに時間をかけることもできる。

** >

随所で言葉の重なりが描かれます。

おわりに~WING編を経ての変化と、アイドルになった理由について

 WINGの活動を通じ、浅倉透という人間はどう変化したのか?これについて考え、総括に入っていきます。まず、「アイドル浅倉透」について。WING編では透とプロデューサーの「向き合い」にほぼ終始しており、ファンとの交流やアイドルとしての進歩、成長を見ることは難しい内容となっています。ただ、コミュ3のオーディション後のやり取りから考えても、自分の思いを口にして伝えるという部分でアイドルとしての成長を見いだせるように思います。(いわゆる「アイドルとしての成長」をどこまで望んでいるのか疑問な部分もありますが…)

WINGを通じた取り組みで透が得たものは、以下の2つだったと考えます。
①これからの人生で嬉しいことを見つけていくこと
②口にしなければ伝わらないという認識

①はpSSR「10個、光」で『一生のうちにやりたい10のこと』を考える過程でさらに踏み込んだ内容が描かれています。

②について、プロデューサー以外の人間に対してどこまでその認識を持ったか、あるいは伝える/伝えないについてはまだ描かれていない部分も多いように感じます。今後描かれる時は来るでしょうか。

 そして、透がアイドルになった理由について。コミュ2での透の「アイドルってもっと特別な感じかと思ったけど、学校と変わんないね」という発言が鍵だと考えています。この発言は、アイドルとして何の実績もない透が挨拶してもらえ、ディレクターにも「すごくオーラがある」、「目に力があるなぁ」と評価されたことから来たもの。
つまり、何もしなくても周囲から一定の評価を得られる学校での自分に退屈し、かつてジャングルジムを一緒にのぼったプロデューサーをきっかけとし、「特別な感じ」のアイドルに関心をもったのではないでしょうか。のぼってものぼっても先が見えない、のぼっている実感のない人生を、自らアイドルという特別な世界へ踏み出すことで何か変えたがった面があった、と私は考えています。

 今後も新しいコミュやまだ見ぬ信頼度の言葉を楽しみにしつつ、あれこれ考えていきたいと思います。
最後になりますが、ここまで読んでいただきありがとうございました。この内容をもとに、「分かりあえなさ」についていつかお話しできたらいいなと思っています。

・引用
画像全般:アイドルマスターシャイニーカラーズより
浅倉透 プロフィール 浅倉 透 (あさくら とおる) | アイドルマスター シャイニーカラーズ(シャニマス)

*1:この他に1回、プロデューサーがバス停に来た際にその場の景色を映したセピア色のカットインが入ります。 私は描かれ方から誰の回想でもないと考え、プロデューサーもこの場所を過去に訪れたことがある、とプレイヤーに示す一種の情景描写だと捉えています。